「白い影」作品解説
原作は渡辺淳一「無影燈」。ある個人病院を舞台にどこか人を寄せ付けない謎多き医師と看護婦との愛を軸に病院内での複雑な人間関係や医療問題が描かれた。
1973年のTBS系金曜ドラマ「白い影」(主演:田宮ニ郎、山本陽子)でこの原作の世界が忠実にドラマ化されて以来約30年ぶりのリメイク作となった。
2001年冬、日曜劇場「白い影」ではクールでミステリアスな医師・直江をSMAPの中居正広さんが演じることに。原作の直江像を生かしつつ中居さん持ち前の人前の温かさが物語が進むにつれて直江像をより深いものにしている。そんな直江と恋に落ちるヒロインの看護婦・倫子に竹内結子さん、直江と医療の考え方で対立するヒューマン主義の医師・小橋に上川隆也さん、直江とも深い関係を持つ院長令嬢・美樹子に原沙知絵さんなど、実力派の役者が脇をしっかり固めている。
原作や前作に比較すると、要所で起こる出来事はほぼ変わらないものの、ドロドロしたストーリーではなく、むしろ完全にひとつの温かいラブストーリーとして成立しているのが大きな特徴であろう。年齢設定で直江は30歳、倫子は23歳と原作に比べかなり低くなっている分、2人の間で不器用ながらも切なくも温かいラブストーリーが展開されていくのだ。原作とは登場人物のキャラクターが物語りに合わせて非常に温かいものにアレンジされ、特に竹内さん演じる倫子は守ってあげたいような可愛らしさを持ちながらも芯の強さをしっかり持ち合わせる魅力的な女性で、心を閉ざした直江が次第に心を彼女に許していく過程にも納得がいくほどだ。上川さん演じる小橋医師も誠実な真っ直ぐなキャラクターながらも直江と対等に議論できる強い説得力が備わっている点で原作と異する。それぞれの役者を演じる俳優陣が持ち前のキャラクターを生かしきってハマり役を演じているのも心強い。
人の生死が描かれストーリー的にシリアスになる反面、太陽の光にきらきらと照らされる川、オレンジ色を基調とした小春日和を思わせるような穏やかで綺麗で温かい映像作りや、タンポポ、ハーモニカなどのアイテムを通して温かく優しく物語が展開されていく…。直江のミステリアスな影の面と、包み込むような倫子の温かさ…。ストーリーおよび映像面での影と光の対比が作品に深みを与えていて大きな魅力を引き出している。
物語前半では謎多き直江医師の不可解とも取れた行動の中に直江の医師として、人間としての生き方の強いポリシーが現されていく。そんな直江に接するうちに倫子は少しづつ直江を理解していく。中盤以降ではお互いが次第に惹かれあっていき、ストイックでピュアなラブストーリを育んでいく…。もう誰も愛することなく死への孤独な戦いを続けていくことを決めた直江が倫子に出会い、温かい愛に包まれながら、2人は“その時”を迎えていく…。終盤ではそんな2人の切なくも確実にひとつの愛の形が描かれる。直江に出会った事で周囲の人間も次第に変わっていく…。そして直江も倫子に出会って変わっていく…。
演出スタッフもTBSが誇る豪家陣が担当。人間らしい温かさの吉田健チーフD、情熱の福澤克雄D、繊細でクールな平野俊一D、奇抜さの金子文紀Dがそれぞれの個性を生かして各話を演出しており、4人の演出のバランスが過剰に突出することも無く非常に良い。全10話だが各話ごとにストーリーに意味があり無駄なく物語が構成されている。
非常に巧妙な伏線がいくつも隠されており、終盤で今までのストーリーの伏線が効果的に効いてくるのも感動に繋がっている。1回通しで見た人でもぜひ再び鑑賞すれば新しい発見や感動が見つかるはず。単純に素直に作品の温かさや感動を味わうほうが物語にどっぷり入り込んでいけるはずだ・・・。まさにドラマ界の21世紀最初を飾る名作と言えるであろう。
(作品解説:ふくだけんご 011003)
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